12/10日号で配信された「書評のメルマガ」ではユーモアたっぷりの本について書きました。
http://back.shohyoumaga.net/?eid=979068
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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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78 ユーモアは明日の活力
12月になりました。
今年も残りわずか。あと何冊読めるかなと思っているとき、最高におもしろい本を読みました!
『口ひげが世界をすくう?!』
ザラ・ミヒャエラ・オルロフスキー作
ミヒャエル・ローハー絵 若松宣子訳
岩波書店
ヨーヨーの大好きなおばあちゃんが亡くなってしまいました。おじいちゃんはとても悲しみ、出かけることもなく、新聞ばかり読んでいます。しかし、ヨーヨーの心配をよそに、なんと、おじいちゃんは「ひげの世界チャンピオン」になる準備をはじめたのです。
ヨーヨーはおじいちゃんを応援し、ひげコンテストのアシスタントとして、大会にも一緒に行き、おじいちゃんをしっかり支えます。
イラストたっぷり、ルビつきなので、小学校低学年から楽しめます。
世界ひげ大会に出るためにひげの手入れに必要な道具は見開きいっぱいに描かれ、興味をそそられました。各章にもひげがマークになっており、遊び心があちこちにちりばめられてます。
さあ、どんなひげでおじいちゃんは大会に挑むのでしょうか!
そのひげは、それはそれは素晴らしくキュート!
とにかく見て!としか言えません。
ひげが鍵となる物語なので、本書には複数種類の帯が用意されており、版元
サイトで全種類みることができますので、ぜひ。
https://www.iwanami.co.jp/book/b325123.html
ユーモアいっぱいの本書は、年末の忙しさでつかれているときに心をほぐしてくれます。ぜひ手にとってください。
『しずかにあみものさせとくれー!』
ベラ・ブロスゴル さく おびか ゆうこ 訳 ほるぷ出版
2017年コールデコット賞オナー作品。
大勢の孫に囲まれてくらすおばあさん。冬がくるまえに編み物仕事をしたいにも関わらず、子どもたちがにぎやかで、集中させてもらえません。そこで、静かに編み物をできる場所を求めて家を出ることにしました――。
あちこちさまよいながら、求めていた場所は意外なところ。そこで一仕事したおばあさんは次にどうするか。
作者ベラ・ブロスゴルはロシアのモスクワ生まれ。5歳のときにアメリカに移住。2011年にコミック作家としてデビュー。本書は著者のはじめての絵本作品。
コミカルにリズムよく、画面の空白づかいがとてもおもしろい作品。
旅路の最後まで、どうぞお楽しみにください。
それでは、今年最後にご紹介する絵本は、時季にちなんでクリスマス絵本。
『テオのふしぎなクリスマス』
キャサリン・ランデル 文 エミリー・サットン 絵
越智典子 訳 ゴブリン書房
テオはクリスマスをとても楽しみにしている男の子。でも、おとうさんもおかあさんも仕事でいそがしく、クリスマスイブでも、早く帰ってくるからねと言いつつ、後のことはベビーシッターさんまかせ。
テオは願います。
心臓のすみからすみまで、ぜんぶをこめて、ひとりぼっちでないことがいいと。
クリスマスの奇跡がここからはじまります。つよく願うことと、それがかなう日なのですから。
キャサリン・ランデルは『オオカミよ森へ』(原田勝訳 小峰書店)で骨太の動物物語を書いている作家。本書では、少年の強い気持ちを丁寧に描いています。
エミリー・サットンの絵は、華やかで瀟洒にクリスマスの雰囲気を見事に描き、どのページも美しいのひとこと。思わず何度か絵をなでてしまったほどです。
テオのクリスマスの願いごとがどのようにかなうのでしょう。
ラストのゴージャスさは、すごーい!と感嘆しました。
さあ、みなさまの願い事もかないますように。
メリークリスマス!
そしてすこし早いですがよいお年をお迎えください。