『イードのおくりもの』『どうぶつたちがねむるとき』『すごいね! みんなの通学路』//書評のメルマガ

7月に配信された「書評のメルマガ」では3冊の本について書きました。
http://www.shohyoumaga.net/

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■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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73 贈り物

誕生日や記念日など、贈り物をする機会が年に何回かあります。相手のこと
を考えて喜ぶものを想像するのは、送る方にとっても楽しい時間です。

『イードのおくりもの』
ファウズィア・ギラ・ウィリアムズ 文
プロイティ・ロイ え 前田君枝 訳 光村教育図書

本書はトルコ民話をもとに書かれたインドの絵本の邦訳です。
イードとは、ラマダン月(イスラーム暦第9月)が開けるお祝いのお祭り。
巻末の訳者のことばによると、ラマダン月の断食明けのイードはたいへんもり
あがり、日本のお正月そのものだそうです。
また、日本にもイードを祝うイスラーム教徒の人たちがたくさん暮らしてい
るそうです。

さて物語は、くつやのイスマトさんが家族にイードの贈り物の買い物に出か
けるところからはじまります。相手が喜びそうなものを見繕い、最後に自分の
買い物もしたイスマトさん。でも、買ったズボンはゆび4本分長いのです。

しかし、誰もがイードのお祭り準備で忙しく、イスマトさんのズボンをなお
す時間のある人が見つけられません。そこでイスマトさんは……。

愛情たっぷりの締めくくりに心があたたかくなりました。

絵はイギリスのニック・シャラットさんの画風を思い起こす、ポップな楽し
い雰囲気。色がきれいです。

毎日の仕事や家事に追われているとなかなか相手が喜ぶことができないもの
です。おだやかに過ごすことを心がけていても、疲れていると難しい。それで
も、相手の喜ぶ顔を想像し行動するのは大事だとこの絵本を読んで思いました。

贈り物にぴったりのおくりもの絵本です。

『どうぶつたちがねむるとき』
イジー・ドヴォジャーク 作 マリエ・シュトゥンプフォーヴァー 絵
木村 有子 訳 偕成社

次のご紹介する絵本はチェコの絵本です。

我が家はみな、一日のうちで一番待ち望んでいるのは布団の中に入るときと
いいます。つつがなく一日が終わり、お風呂でゆるみ、布団で眠る至福の時間。

この絵本は、幼児向けのおやすみなさい絵本ではなく、様々な動物たちが、
どんな睡眠をとるのかについての知識絵本です。

ペリカン、ブダイ、マルハナバチ、ラッコ、アザラシ、シロクマ、
フラミンゴ、ヤマネ、キリン、ネコ、ミドリニシキヘビ、キツネ、
クジャク、ラクダ、イヌ、アマツバメ

フロッタージュ(でこぼこした物の上に紙をおいてこする技法)を効果的に
用いて描かれた動物たちは、独特で印象深く、なにより美しい。

上記の中でいちばん眠る動物はわかりますか。
私は初めて知りました。

キリンは2時間くらいしか眠らないこともも初めて知りました。

動物園に行って、実際に動物たちを観察したくなります。

子どもはもちろん、大人にもおすすめの絵本。
洒落て美しい装幀なので贈り物にぴったりです。

最後にご紹介するのは、写真絵本。

映画『世界の果ての通学路』をご存知ですか。
偶然テレビで子どもたちと一緒に観た映画です。

ケニア、アルゼンチン、モロッコ、インド、それぞれの厳しい通学路で学校
に向かう子どもたち。
4か国それぞれの過酷さにびっくりしました。

ケニアでは野生動物がでるので襲撃にあわないよう
アルゼンチンでは、石ころだらけの道を馬に乗って通い
モロッコでは週初め、夜明けに起きて22kmの道を歩き週末に帰ってくる
インドでは、オンボロ車イスに乗っている弟を兄弟たちでかついで一緒に通う。

学ぶことが大事だとわかっているから、このような厳しい通学を日々してい
る、その姿に子どもと一緒に感嘆しました。

今年高校生になった娘の英語の教科書には、この映画の話がのっていて、す
ぐにあの映画だ!とわかった娘が嬉しそうに教えてくれました。

『すごいね! みんなの通学路』
文 ローズマリー・マカーニー 訳 西田 佳子 西村書店

西村書店刊行の新シリーズ「世界に生きる子どもたち」第一弾の絵本。
これもドンピシャリ、映画と同じように厳しい通学路で学校に通う子どもた
ちがうつされています。

地形の厳しさだけでなく、自然災害などでも通学を困難にさせる子どもたち。
日本の子どももいます。

どの子も学校に向かって歩いています。
いろいろな子どもたちがいる。笑顔だけでない、危ない道なので緊張した顔、
厳しい顔。

巻頭には日本語版限定で、ノーベル平和賞受賞のマララさんの写真も掲載さ
れています。「すべての子どもたちに教育を受ける権利を」とマララさんは訴
え、レバノンに自身の基金で女学校をつくっています。

若いマララさんを見習って大人もまた子どもの未来をつくっていきましょう。
そんな話を読んだ人としたくなりました。

たくさんの子どもたちと大人に贈りたい絵本です。