読み進めるほどに、自分に近づけてしまった。
母との関係、
夫との関係、
そして、子ども。
私自身が年齢を重ね、人生が進み、
どれにも心当たりがあるのだ。
自分の人生ですべてがパーフェクトでないがゆえに
つい犯人捜しをしてしまう。
あのとき、あんなことがおきなければ、
こうしていれば、
と。
きりのないタラレバに
からまれそうになる。
主人公の名前、それは本のタイトルにあるルーシー・バートンほかならない。
入院中、疎遠だった母が夫にたのまれてまとまった期間見舞いにきてくれる。
ルーシーは自分が思った以上に母の見舞いを歓迎し、会話を楽しむ。
長くなる入院生活で夫や子どもを恋しく思うが、
結果的に、心を満たしてくれたのは母の見舞い。
その後、家族に戻ったルーシーにも変化がおき……。
この小説は時系列ではない。
章立ては後半にいくにしたがって細かくなる。
訳者あとがきにあるように、その細かくなった章立てはより小説の輪郭を際立たせる。
ごろんとフライパンに鎮座したガーリック。
彼の妻は料理が好きと書いたあとに書かれるいまの生活が私にはもっとも印象に残った。
それはよくわかるからだ。
私はそれを経験した。
重たく語ってしまいがちの人生のよどみを
軽やかに涼しげに書いた力量に羨望する。