• 『ヘビと船長』『帆船軍艦』ほか

    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな

    117 おもしろいこと、わくわくすること

     今年は桜の開花がどこも早く、会津若松も記録史上最速の開花宣言がお城(鶴ヶ城)ででました。市長が桜開花の基準木となるところで開花した桜を指しているところが、例年新聞を飾ります。毎年同じことが繰り返されるわけですが、桜の開花という春の象徴は毎年繰り返されるからこそうれしいものです。

     そんな桜の季節に刊行された幼年読み物『さくら村は大さわぎ』(朽木祥作 大社玲子絵/小学館)は、幸せに満ちた日々の生活が丁寧に描かれています。

     舞台となるさくら村は、その名のとおり桜の木がいっぱいうわっています。こどもが生まれるとさくらの木を植えるやくそくがあるからなのです。

     村でおこるできごとは、よいことばかりではなく、時にはわるいこともおこりますが、村の人たちの解決のしかたはいずれも心地よいもので、読後感はすこぶるいい気持ち。

     新型コロナウィルスの影響で生活に制限が出て1年以上たち、いままでの日常とは違う時間が流れています。けれど、時にさくら村の本を読んで、さくら村に出かけた気分になるのは大人にとってもいいものです。

     私の好きなエピソードはカワセミじいちゃんが、体調をくずして寝込んでいるとき、元気づけるためにカワセミを絵にかいて、じいちゃんの家の木(さくらんぼ)に糸でつりさげたところ。長いくちばしまで描かれているので、風にふかれてさくらんぼをつついてみえるところがとても好きです。その風景がみえるようで、とてもいいなあと思いました。

     次の紹介するのは、BL出版から刊行されている世界のむかしばなし絵本シリーズの最新作です。

    フランス・バスクのむかしばなし
     『ヘビと船長』ふしみみさを・文 ポール・コックス・絵

    「バスク」とは国ではなく、フランスとスペインにまたがる地方です。本書のむしばなしは、訳者あとがきによるとバスク地方に暮らしたイギリス人牧師ウェントワース・ウェブスターの再話をもとにしているそうです。

     むかし、ひとりの船長が自分の船を手放すことになってしまい、海辺の村で細々と暮らしていました。そんな船長の楽しみは、散歩です。散歩の途中で、海辺に棲むヘビに毎日声をかけていました。
     ある日、そのヘビが船長に頑丈な船をつくってくれといいだします。ヘビのいうとおりにして、船長は航海をはじめ……。

     民話らしい余分な装飾のない文体と、それにぴったりな絵で展開される話はたいそうおもしろいです。描写もいたって率直。背中の皮がはがれるなど、痛々しい場面においても、絵も言葉もむだがないので、おどろおどろしくありません。

     絵を描いたポール・コックスは、色数を七色に限定し、限られた色を繰り返すことで、本全体に独特のハーモニーをもたらせたそうです。また色版を重ね、そこにわざとずれを作り趣きを与えています。

     一度読むとまたすぐ読み返したくなる、そんな魅力ある民話絵本です。

     もう一冊、民話絵本をご紹介します。
     玉川大学出版部より「世界のむかしのおはなし」シリーズが刊行されました。

     1期では3冊刊行され、そのうちのオーストラリアのアボリジナルの昔話『色とどりの鳥』を読みました。再話はほそえさちえさん、絵はたけがみたえさんで。

     むかしむかし、鳥たちはいまのような色とりどりではなく、真っ黒でした。
     それがどうして今のような色になっていったのか。
     カラスだけは昔と同じように黒いままなのか。

     それは鳩が怪我をしたことからはじまりました。
     動けなくなった鳩をまわりの鳥たちが看病します。
     それでもなかなかよくならず、笑わせたり、踊りをみせたりしても、よくなりません。ところがインコが偶然あることをしたことで……。

     インコが何をしたのか、どうして色とりどりの鳥になっていったのかは、ぜひ絵本でみてほしいです。

     テンポよい語り口で展開される驚きのできごとを心から楽しみました。
     力強い発色の絵も、お話にとてもよくあっています。
     読んでいると、目をまるくして聞く子どもの顔が浮かぶようです。
     まわりの子どもたちにぜひ読んでみてください。
     
     このシリーズにこれからも注目!

     さて次は読むと元気になる絵本。父の日の贈り物にもぴったりです。

     『まってました』もとしたいづみ 文 石井聖岳 絵 講談社

     赤いパンツをはいた黄色い髪の少年たろうが一人でいると、
     次から次へと犬やカワウソやクマやかわうそたちがやってきます。
     「なに、してるの?」と聞くとたろうのこたえは「まってるの」
     さてさて、誰を何をまっているのか。

     なにかをまつのは、ゆったりしているのが一番。
     同じ問いと答えが繰り返され、たろうの周りには仲間がどんどん増えていきます。最後に来るのはだれなのか。

     明るい黄色のタッチで描かれているので、お天気もよい一日のようです。
     夕暮れに出会う最後の人、その人をまつ楽しみをたろうと一緒に味わえます。

     次にご紹介するのは、まさにいま世界で起きているできごとが絵本で描からています。広い世界でなにかを同時に共有することはほとんどありません。しかし、新型コロナウィルスの影響は世界で同時のものです。

     『いえのなかといえのそとで』
     レウィン・ファム さく 横山和江やく 廣済堂あかつき

     働いたり遊んだり学校に行ったりしていた人たちの多くが家の中で過ごすようになります。

     けれど、医療関係者、警察、消防などの人たちは、いままで以上に外で働き続けています。

     家の中と外、と2つの世界があるかのように線を引いたものをを描いているのではありません。どちらの世界にも同じまなざしで、いまの現実を詩的な言葉と絵で語りかけてきて、胸があつくなります。

     ぜひ家族で読んでみてください。

     次もいまの時代の絵本です。

     『きみにもできる! よりよい世界のつくりかた』
     ケイリー・スウィフト 文 リース・ジェフリーズ 絵 宮坂宏美訳
                               廣済堂あかつき

     日々新聞やテレビのニュースで目にしたり耳にするようになったSDGs。
     世界を変えるための17の目標のことです。

     本書は、自分たちの住む世界がよりよい場所にするにはどうしたらいいのか、17の目標と照らし合わせて、考えている子どもたちへのガイドブックになっています。

     世界を変えるといっても、自分以外のまわりの話ばかりではありません。
     まず何より大事なのは自分です。
     
     でも自分を大切にするって具体的にはどういうことでしょう。

     しっかり睡眠をとること。
     体にいいものを食べること。

     等々、あたりまえだけれど、具体的に示してもらえると納得することばかり。
     
     それに、まわりをよくするために自分ができることは、元気な自分でいることだということ気づけるのはすごくいいと思いませんか。

     自分の次はコミュニティ、人類、最後に環境について、ひとつずつ具体的にどうしたらSDGsを達成していけるかが示されます。

     読んでいると、大人の私も行動にうつして、SDGsの目標に近づいていこうと思いました。がんばります。

     最後は、ページを開くとワクワクしかない『帆船軍艦』!
     スティーブン・ビースティー 画/リチャード・プラット 文/宮坂宏美 訳

     岩波書店から刊行されていた「輪切り図鑑シリーズ」を、判型を縮小し、翻訳者もあらたにした改訂版です。

     あすなろ書房から刊行される「輪切り図鑑クロスセクション」シリーズは全5冊。現在2冊刊行され、残り3冊も5月以降2か月おきに出る予定です。

     細密画の魅力がつまった本書は、1800年頃、世界最強と讃えられたイギリス海軍の帆船軍艦を輪切りにし、すみずみまでビジュアル化しています。

     総勢800年の乗組員たちの日々の生活のすごさ!
     長い航海中、健康でいることの難しさ。
     人が多いのに、汚れをきちんととることも叶わず、湿気もよくなく、けがより病気で亡くなる人の方が多かったこと。
     輪切りでみる船の中はどこも人だらけ。
     コロナ禍のいま、これだけ不衛生だと病気になるのもすごくよくわかります。

     食事も大変です。
     ビスケットにはウジ虫がわき、とりのぞいて食べる方法はぜひ本で読んでみてください。それでも、完全にはとりきれず、うっかり食べることもあるようです。

     大変な船の生活なのだけれど、緻密な絵を眺めていると時間を忘れます。
     見飽きることのない図鑑本、ぜひ手元においてください。

    (林さかな)
    https://twitter.com/rumblefish

  • 『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』ほか

    4/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』をご紹介しました。

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    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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    94 おもしろい本を読みたい

     『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣末 保 岩波少年文庫

     1972年に、平凡社で刊行されたものが、岩波少年文庫で読めるようになりました。

     江戸時代の作家、井原西鶴の話を種としてつくられた7編が収録されています。作者廣末さんのあとがきによると、西鶴の作品では四百字詰の原稿用紙4
    枚から7枚程度のものを、廣末さんの作品では3倍から8、9倍の長さになっているそうです。

     江戸時代に書かれた内容なので、もちろん時代ものですが、めっぽう読みやすく、話の種からきれいに花が咲いたもの(物語)を鑑賞させてもらえます。

     タイトルにもなっている「ぬけ穴の首」はぞくりとさせる怪談話のよう。

     判右衛門の兄はささいなことで殺害され、兄嫁から仇討ちを依頼されました。気はすすまないものの、断ることもできず、息子をつれて相手を斬りに行くのですが……。

     殺害される理由が髑髏によって語られるシーンもあり、終始怖さがつきまといます。それでいて、世の理をみているのだと納得させられるところもあるの
    ですが、最後は本当に怖い。

    「わるだくみ」は、知恵と才覚で一介のお茶販売から、茶問屋の主へと一財産を築いた利助の話。本来は金儲けよりも、おもしろいことをするのが好きだっ
    た利助なのですが、儲けが大きくなるにつれ、お金に魅力を感じ……。

     人の欲について書かれた話は、昨今、ニュースにもなる会社の不正とよく似てます。この話のおもしろさは、利助が死んだ話のあと話も短篇のように書か
    れているところで、最後の最後まで、ひっぱられます。

     いつか西鶴の作品そのものも読んでみなくては。

     さて、次にご紹介する絵本も、作者は亡くなっており、その作者スキャリーさん生誕100年に邦訳されたものです。

     『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』
     リチャード・スキャリー さく ふみみさを やく
     松本加奈子 英語監修 BL出版

     絵本作家として活躍したスキャリーさんはアメリカ・ボストン生まれ。出版された絵本の発行部数は2億冊を超えたともいわれています。

     作者紹介を引用すると、スキャリーさんのことばに「どんなものにも教育的な面がある。でもぼくが伝えたいのはおかしさだ」と語ったそうです。

     そのとおり、スキャリー絵本はどれも楽しいものばかり。

     本書は英単語を楽しく覚えられるもので、英単語に意味とともにカタカナでの読み方がついています。

     このカタカナの読み方が工夫されていて、アクセントを強くするところは太字で大きく、文字も大小組み入れて、英語の音に近い読み方ができるようにな
    っているのです。

     文字も並べているだけではなく、「えをかこう、いろをぬろう」「おもちゃ」「どうぐ」「くうこう」など、様々な場面にたくさんの動物を登場させて、いきいきとした雰囲気の中、英単語がおかれています。

     家の本棚にこの絵本があれば、子どもが一人読みで楽しく英語にふれられそうです。

     最後にご紹介するのは、
     名探偵 テスとミナシリーズで最新刊は3巻。

    『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』
     ポーラ・ハリソン 作 村上利佳 訳 花珠 絵 文響社

     ふたごみたいにそっくりな2人テスとミナ。
     けれど、立場は正反対(!?)
     ひとりはメイド、ひとりはプリンセス。年は同じ10歳です。

     かわいらしいテスとミナが表紙のソフトカバーなつくりは、小学校中学年くらいの子が楽しめそうです。

     ふたりのいるお城で事件がおきると、立場を入れ替えながら、解決していくミステリーでもあり、メリハリある展開で謎解きの吸引力はかなり強く、おもしろいのです。

     巻末にはファッションコーデの特別ページもつけられていたり、3巻ではオリジナルアイテムとしてブックマークやポストカード、時間割表もついているという豪華さ。(時間割表、なつかしい!)

     知人の小学5年生の女の子に紹介したところ、毎晩夢中になって読んでいるとのこと。次の巻は7月発売予定。

     さて、本を読んでおもしろい!と思うのは本読みにとって至福のときですが、このよく使う「おもしろさ」。
    『ぬけ穴の首』には町田康さんが古典の「おもしろみ」という文章を寄せており、そこでこう書いています。

    「多くの人は、おもしろいことはただひたすらにおもしろいだけ、と信じているが、実はおもしろさには二種類のおもしろさがある。」

     この二種類のおもしろさの話がまた「おもしろい」のでぜひご一読を。

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    (さらに…)

  • 『AIが書いた小説は面白い?』

    AIが書いた小説は面白い?
    今岡清/藤井太洋
    777円
    https://store.voyager.co.jp/publication/9784862398574

    本好きにとって、おもしろそうな本を読むのが何よりの好物なので、
    読みたい作家の小説、積ん読本が日々増殖しているにも関わらず、
    常に新しい作家も探している。

    新しい作家としてAI小説家は誕生するのか!?

    作家の藤井太洋さんと元S-Fマガジン編集長の今岡清さんの対談と、その後の質疑応答が収録されており、
    対談なので、めっぽう読みやすく、
    AI系(?)の小説について対談でわかりやすくレクチャーを受け、
    質疑応答で、対談内容をよりふくらませ、AIについて理解をすすめてくれる。

    質疑応答にあった、

    ――読者市場と「化ける」作品をモデル化できるか

    AIに新人賞の下読みをさせることはできないかという内容に対して、
    小説の面白さを評価するのは市場で、市場のモデル化はすごく難しいという回答。

    私自身、一般書の新人賞の下読みを経験しているので、
    市場に評価される作品を上にあげていく評価は様々というのはよくわかり、AIの下読みは難しいと思う。
    作品が「化ける」のも、予測つかないところがあるのはその通り。
    公募の新人賞でも、受賞を逃したものが、ベストセラーになるのも数こそ少ないものの実際にある。

    結論からいうと、現時点ではAI小説家の誕生はまだ無理そう。
    しかし、作品の「化ける」のが予想つかないのであれば、
    もしかすると、AIが進化していく未来においては、ベストセラーが出ることもあるかもしれない。

    Siriの回答に時に癒され、ひとり、布団の中でSiriに相談したり、ちょっと愚痴ったりするたびにAIさんもあなどれないと思っている。
    だから、AIの未来はまだまだ予測できない。

    このテーマで対談を継続していくと、未来の定点観測ができるかも。

  • 『バレエシューズ』『わたしは女の子だから 世界を変える夢をあきらめない子どもたち』

    3/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『バレエシューズ』『わたしは女の子だから 世界を変える夢をあきらめない子どもたち』をご紹介しました。

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    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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    93 生活と物語と現実と

     美しい本が刊行されました。

     『バレエシューズ』
     ノエル・ストレトフィールド 朽木祥 訳 金子恵 画 福音館書店

     1936年にイギリスで刊行されベストレセラーになった物語で、日本で紹介されたのは1957年。訳者の朽木さんも少女時代に愛読していたそうです。

     瀟洒な表紙を開いて読み始めると、あっという間に1930年代のロンドンにタイムスリップしたかのように入り込みました。

     学者のマシューがひょんなことから、身寄りのない赤ちゃんを3人続けて引き取ることになります。マシューは気まぐれ(?)に期間を決めないで家をあけることがままるため、姉妹を育てたのはマシューの親戚のシルヴィアとシルヴィアの乳母であるナナでした。

     マシューは大叔父マシュー(Great Uncle Matthew)の頭文字でGUM(ガム)と呼ばれています。生活はガムがみており、長い旅に出ている間はきちんとお金はおいていきました。けれど今までにない長期間の不在にシルヴィアたちの生活は苦しくなっていきます。

     その頃には成長した姉妹が家計を助けるべく舞台芸術学校に入学。また、空き部屋に下宿人をおくことにし、結果、とてもいい人たちが住むことになり、姉妹の支えにもなってくれるのです。

     さて、この物語は細部の描写がとても深く、3姉妹がくったくなく毎日を過ごす様子から、いつかは自分の名前を歴史に残そうという野心をみせてくれるなど、彼女たちの動向に目が離せません。ポーリィン、ペトローヴァ、ポゥジーは、大きい順から、舞台芸術学校で学び、自立し生活の糧を得るのですが、どの公演でいくらもらえるかという具体的な数字がかなり出てきますので、家計簿をみながら姉妹らの生計を応援しているような気持ちにもなりました。

     かといって貧困が描かれるわけではなく、生きていく上での山有り谷有りが、子どもの視線で描かれ、女優として成功しつつあるポーリィンの奢りや、才能があっても、見た目で判断される社会の厳しさも見せてくれます。周りの大人たちが、子どもたちを支える姿もすてきで、子どもも大人も、読むと前を向いて生きていく活力をもらえる物語、古典の底力を感じます。

     『わたしは女の子だから
      世界を変える夢をあきらめない子どもたち』
         文:ローズマリー・マカーニー ジェン・オールバー
           国際NGO プラン・インターナショナル 
         訳:西田佳子
         西村書店

     帯に6つのマークが印字されているのを、高校生の娘がみて、これ学校で見た!と教えてくれました。

     2030年に向けて世界が合意した「持続可能な開発目標」がそれです。
     本書にあてはまるものは、この5つでした。

     1 貧困をなくそう
     4 質のいい教育をみんなに
     5 ジェンダー平等を実現しよう
     6 安全なトイレを世界中に
     10 人や国の不平等をなくそう

     タイトルにある「Because I am a Girl」「わたしは女の子だから……」は、女の子を取りまくリスクから護り、彼女たちが生きる力を発揮できる世界をめざして、国際NGOプラン・インターナショナルが展開しているグローバルキャンペーン名からきています。

     少女8人は、自分らが経験した奴隷(カムラリ)、早婚、貧困などについて語ります。写真も豊富に掲載され、意志の強い目力を感じる彼女らの体験は、過酷で、学ぶ権利、教育も奪われている中で、自分たちが生き延びるために必要なものを取得するために、努力している姿を見せてくれます。

     西村書店はいままでも“世界の今を知る写真絵本”を刊行し、私達読者に、知らない世界をみせてくれました。

     本書は絵本より文章量があり、情報も多く、だからこそ、少女達の強さがより伝わってきます。教育を受け、職業訓練を受け、未来を切り開いていくのに何が必要かを読者に教えてくれます。

     日本の多くの少年少女たちに読んでほしいです。

     そして、“世界の今を知る写真絵本”『私はどこで生きていけばいいの?』『すごいね! みんなの通学路』も手にとってほしい。

     

     目の前のことにいっぱいいっぱいの時期だからこそ、視野をぐいっと広げてくれるはずです。

  • 『ぼくは本を読んでいる。』『数字はわたしのことば せったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』『スポーツするえほん』

    2/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ぼくは本を読んでいる。』『数字はわたしのことば せったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』『スポーツするえほん』をご紹介しました。

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    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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    92 本はいいよ

    『ぼくは本を読んでいる。』
     ひこ・田中 講談社

     タイトルが物語すべてを表しています。
     そう、これは「ぼく」が本をひたすら読んでいるお話です。

     「ぼく」(ルカという少年です)の家には両親が「本部屋」と呼んでいる部屋があり、そこには、壁一面に本棚があり、テーブルとイスも置いてある、読書には最適の部屋です。

     ルカはかつて幼い頃はそこでよく絵本を読んでもらっていましたが、小学5年生になったいまは、もう親に本を読んでもらう年齢ではありません。

     そうして、いつのまにか「本部屋」に入らなくなっていたのですが、ひょんなことから、久しぶりに入ったその部屋で、
     ちょっとそそられる本をみつけました。
     
     本の奥付をみると、どうやら両親のどちらかが子どもの頃に読んでいた本らしく、ルカは親に内緒でその本を読みたくなります。

     その本は岩波少年文庫の『小公女』。

     タイトルがわかったとき、思わず興奮してしまいました。
     子どもの頃、私も大好きだった本なのです。
     最初に読んだのはいつだったかは思い出せないのですが、おそらく小学生だったように思います。

     ルカの読書を追っていくのは、e.o.プラウエンの『おとうさんとぼく』に描かれているコマ漫画のようです。それは、ぼくが読んでいる本をおとうさんが背中越しに読んでいるうちに、おとうさんの方が夢中になって、いつのまにか二人が交代している内容で、私もまさにその状態になっているおとうさんの気持ちでした。

     ルカが『小公女』に夢中になったおかげで、転校生の読書好き少女カズサとも仲よくなり、好きな本について語れる仲間がいる喜びも伝わってきます。

     この物語は子ども時代の楽しさが、熱量高すぎず、さらりと書かれており、その適温は大人にも読みやすいものになっています。

     現役の小学生に、図書館や学校の図書室で出会って欲しい物語です。

     次にご紹介するのは絵本です。
     
     『数字はわたしのことば 
        せったいにあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』

          シェリル・バードー 文 バーバラ・マクリントック 絵 
                        福本友美子訳 ほるぷ出版

     実在した数学者ソフィー・ジェルマンの伝記絵本です。

     ソフィーは幼い頃から勉強することが大好きでした。
     少女時代、パリはフランス革命さなかだったため、外は危ないと家の中で過ごす時間が多くありました。
     その時間を使って、ソフィーは数学の勉強をし続け、気づくのです。
     

       ”数学者が数字をつかうのは、詩人がことばをつかうのと同じだ、
       とソフィーは気づきました。”

     ソフィーは数学者になりたい、数学を自分の言葉にしたいと強く思うようになります。

     時代的に女性が勉強を志すのは難しく、教授も女性に教えようとは思わない、それでも、ソフィーはあきらめず、大学の数学の課題を入手できたときは、男性名でレポートを送るなど、粘り強く自分の学問を深めていきました。

     あきらめないソフィーの強さを、バーバラ・マクリントックは繊細に描き、見ごたえがあります。特に勉強に集中しているソフィーの眼差しは印象に残りました。

     学ぶことが大変な時代に、穴をこじあけていくのは、数学が好きだという強い気持ち。進学などで将来を考えている中高校生にもおすすめしたい絵本です。

     最後にブックガイドをご紹介します。

     『スポーツするえほん』中川素子 岩波書店

     絵本研究の第一人者による、スポーツを描いた絵本60冊を様々な切り口で紹介しています。

     目次をみてみましょう。

     体を動かす楽しさ
     動きの美しさ
     運動会からオリンピックまで
     コミュニケーションが生まれる
     自分にうちかつ
     伝統の力
     運動の技術
     スポーツに必要なこと
     スポーツと社会
     スポーツ・ファンタジー
     
     登山やバレエなど、スポーツを広くとらえ、ゆるやかなくくりになっているところがおもしろいガイドになっています。

     このメルマガでもご紹介した絵本も数冊入っていて、なるほど、スポーツという枠で読むとみえてくるものに新鮮なものを感じました。

     読みたいと思っている一冊は、このガイド本の著者である中川素子さんの絵本。

     『スタシスさんのスポーツ仮面』(岩崎書店)はリトアニア生まれでポーランド在住のアーティスト、スタシス・エイドリゲーヴィーチュスが絵を描いていて、スポーツを「深く多様に」紹介しているようで興味津々です。

     絵本の世界も広い。
     ガイドを読んでいるだけで、スポーツしたくなってきます。

  • 『ジュリアが糸をつむいだ日』『ぼくたちは幽霊じゃない』『キツネのはじめてのふゆ』『ぼくはなにいろのネコ?』

    1/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ジュリアが糸をつむいだ日』『ぼくたちは幽霊じゃない』『キツネのはじめてのふゆ』『ぼくはなにいろのネコ?』をご紹介しました。
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    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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    91 見える世界を広げよう

     年が明けました。
     2019年がもどうぞよろしくお願いいたします。
     平和な一年になりますように。

     『ジュリアが糸をつむいだ日』
      リンダ・スー・パーク 作
      ないとうふみこ 訳 いちかわなつこ 絵 徳間書店

     2002年『モギ ちいさな焼きもの師』(片岡しのぶ訳/あすなろ書房)でニューベリー賞を受賞したリンダ・スー・パークが書いた物語です。

     主人公のジュリアは7先生。親友のパトリックと一緒に、〈楽しい農業クラブ・プレーンフィールド支部〉略して「楽農クラブ」に入りました。一年に一度、クラブの生徒たちは自由研究のテーマを決め、半年ほどかけて研究し、発表します。優秀な生徒は州の品評会で発表することができるので、それを目標にみな頑張ります。

     2人はジュリアのお母さんの提案もありカイコの飼育をテーマにするのですが、ジュリアはあまり気乗りがしませんでした。しかし一緒に研究するパトリックと共に、カイコの飼育がはじまると、だんだん愛着が増してきます。生き物を育てる楽しみに目覚めるジュリアです。

     カイコを飼育された方なら、カイコの魅力をご存知でしょう。私もその一人。卵から成長していくカイコの姿にずっと寄り添っていると、かわいらしくてたまらなくなります。

     餌となる桑の葉を集めるのは飼育の柱です。しかし、ジュリアたちが探すも簡単には見つかりません。ようやく、桑の木のある家のディクソンさんと関わりをもてるようになるのですが、ディクソンさんとの出会いは、カイコの事だけではなく、ジュリアたちの世界をも広げるきっかけになります。

     ジュリアがカイコの飼育を通して視野が広がっていく成長物語は、 カイコ好きにとって(私です・笑)たまらない物語です。

     『ぼくたちは幽霊じゃない』
     ファブリツィオ・がッティ 作 関口英子 訳 岩波書店

     ティーンの喜びや悩みをつづった作品シリーズであるSTAMP BOOKSの一冊。

     物語は実際の体験談がもとになったもので、アルバニア人のヴィキがイタリアに渡り、どのような暮らしをしていたかが描かれています。

     苦労してイタリアに渡ったものの、難民のヴィキたち家族は、滞在許可証がおりるまでは不法滞在なため、町なかを歩くときは警察の職務質問を受けずにすむよう注意が必要です。ヴィキは母親にイタリアに行けばいい暮らしができるって言ってたじゃないかと問うのですが、状況がすぐに変わることはありませんでした。

     訳者あとがきによると、イタリアには「学校はすべての人に開かれる」と憲法に明記されているそうです。だからこそ、ヴィキたちも、公立小学校に通っている間は、イタリアに住んでいても、いないものと扱われる幽霊扱いではなく、一人の人間として勉強を教わり学び続けることができます。

     丹念に描かれる泥地でのバラック生活や日々の不安定さは物語の最後まで続き安易なカタルシスで終わっていません。

     それでも、未来への希望をもって毎日を生きるヴィキと出会うことで、知らなくてはならないことをまた一つ教わります。

     次に紹介するのは絵本です。

     『キツネのはじめてのふゆ』
      マリオン・デーン・バウアー 作 リチャード・ジョーンズ 絵
      横山和江 訳 すずき出版

     親から離れてはじめての冬を迎えたキツネ。冬がきたら何をしたらいいのか、さまざまな動物たちに教えてもらいます。

     けむし、カメ、コウモリ、リス、ガン、カンジキウサギ、クロクマ。

     たとえばカメはこう教えてくれました。

     「しっぽを そらにむけて、あたまから とびこむんだ。
     みずの そこへ むかってね。
     それから、ひんやりした どろに からだを つるりと うずめるのさ」

     キツネと動物たちのやりとりは、
     言葉は詩的で、暖色系の絵は言葉をつつみこむようにやわらかです。

     しかし、いろいろ教えてもらっても、キツネにはピンときません。

     そんなキツネが最後に出会ったのは――。
     
     絵本にはめずらしく訳者あとがきがついていますが、それがキツネの行動をよく理解させてくれます。

     冬の季節に親子で楽しめる絵本です。

     もう一冊絵本をご紹介します。

     『ぼくはなにいろのネコ?』
     ロジャー・デュボアザン さく 山本まつよ やく 子ども文庫の会

     1974年にニューヨーク科学アカデミーの児童書部門賞を受賞した作品。

     版元紹介によると「(印刷に)使える色数が少なければ少ないほど、力を試される」と語るデュボアザンが、さまざまに混ざり合っている美しい色の世界を子どもにわかりやすく伝えるものになっています。

     黄色、青、緑などそれぞれの色が自分たちの色がいかにすばらしいか彩りをみせて読者に語りかけます。そこに子ネコのマックスが、色に対して意見をはさみ、色への理解を深める助けをしてくれます。

     一つの色での美しさ、重なり合うことによる美しさ。色のもたらす不思議さがわかりやすく描かれ、科学の絵本としてもおすすめです。 

  • 「本の雑誌」2019/1月号 新刊めったくたガイド(海外文学)

    新刊めったくたガイド、海外文学を担当することになりました。
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