読書日記(児童書)

  • 棚のタナカちゃん

    作 戸森しるこ 絵 死後くん

    児童書ジャンルの本だけれど、これは夜ドラで話題になった「ひらやすみ」が好きな人は刺さる。と、思う。
    とある町に引っ越してきた男性が、帰り道にふと気が向いて古道具屋さんに立ち寄る。ここまではいたってふつうの設定。
    そうしたら、エブリデイマジックの扉が開いたのです。違和感なく入り込める、非日常の空間の心地よさ。
    子どもも大人もこういうのはたまりません。語られる物語のあちこちに、外国の香りもただよい、大人の私はちょっと子ども時代にタイムスリップした感覚で、知らない外の世界の雰囲気にあこがれながら読んでしまう。それでいて、挿絵が純日本的で、ぶたの貯金箱のファンになりました。
    うちにもタナカちゃん、来てほしい。

    #棚のタナカちゃん #NetGalleyJP

  • 『レモンの図書室』

    まぶしい檸檬の表紙に惹かれて読みました。

    カリプソのママは5年前ガンで急逝してしまいました。
    パパはそれ以来、カリプソにこういうようになります。
    おまえは強い心をもっているじゃないか、泣かずにすむよう強い心をもっているはずだと。

    10歳になったカリプソに、パパは変わらず同じことをいいます。
    「自分のいちばんの友だちは自分だ」
    「他人はいらない」
    つまり人にたよってはだめだと。

    カリプソは素直にそれを受け止めます。
    本を読むのが大好きで、
    ママの部屋だったところを自分の図書室にしてもらい、本に囲まれて過ごすのです。

    学校でも遊びにちっとものらないカリプソはいつもひとり。
    でもメイが転校してきて変わりました。
    メイも本好きなので、2人は意気投合。
    大好きな本の話をいつもできる相手がみつかったのです。
    メイの家に遊びに行くようにもなり、メイのお母さんにもかわいがってもらいます。

    ひとりじゃなくなった世界を知るようになったカリプソは、
    自分のパパをいままでと違った目でみることができるようになり……。

    カリプソが生き生きするようになるのと反対に、
    パパは押し込めていた妻を失った悲しみで、カリプソを世話することが難しくなっていき、
    代わりにカリプソがパパを支えようとします。

    10歳の子どもに大人が本来すべきことをしなくてはいけない状況を想像すると重たい気持ちになりながら読んでいきました。

    本書はイギリスの児童書ですが、
    カリプソの苦しみに気づいた大人が
    〈大人の世話する子どもの会〉にカリプソを連れていってくれます。

    そんな会があるのですね。
    訳者あとがきによると、
    「病気や障害を持つ家族の介護や看病をする子どもや若者が、ここ数年注目を浴びています」とのことで、若い人たちが介護することから「ヤングケアラー(若い介護者)」と呼ばれているそうです。

    子どもが子ども時代を得られず大人になることは、いつかどこかでひずみがくるように思います。
    そのひずみを小さくするには、こういう会は助けになるかもしれません。

    本は力になることはもちろんですが、
    生身の力も子どもには必要。

    大人も病気や障害をもつことはある、その状況はなくせないのだから、
    周りの大人にできることを意識したい。
    この本が必要な子どもに届きますように。

    重たいことばかりを書いてしまいましたが、
    カリプソとメイが心から楽しんで読書している描写は、とっても楽しいです。
    巻末には読書案内として、物語にでてきた本の一覧もあります。
    未訳の本はこれから日本語で読めるといいな。

  • 『シロクマが家にやってきた!』

    『シロクマが家にやってきた!』
    マリア・ファラー 作
    ダニエル・リエリー 絵
    杉本 詠実 訳
    白水 あかね 装丁
    あかね書房

    海外文学のおもしろさを伝えてくれる「BOOKMARK」という小冊子をご存知でしょうか。
    2018年1月現在、最新号は10号ですが、その前の9号の特集が装丁でした。「顔が好き♡」というタイトルも秀逸で、確かに装丁は本の「顔」ですね。

    ご紹介する本書『シロクマが家にやってきた!』も「顔」がすてきです。
    人柄(いや、クマ柄でしょうか)のよさそうな顔と、クマを見上げる少年のいい感じが伝わってくる表紙。
    そして、周りにはさかながいっぱい。
    なにせ、わたくしのハンドル名がさかななものですから、特にさかなが描かれているものは無条件に惹かれます。
    とはいえ、ここに描かれているさかなは、かわいがられる対象ではないのですが、それはさておき。

    主人公アーサーには障害のあるリアムという弟がいます。
    両親は毎日の生活の中でリアムを優先にことをすすめるので、アーサーは不満がつのりリアムを邪険にしてしまいます。
    アーサーがテレビでサッカーゲームを見たかった日、リアムがパニックをおこした為テレビはおあずけ。アーサーはつもっていた不満を爆発させ家を飛び出そうとするのですが、家の前になんとシロクマが……。

    シロクマの名前はミスターP。

    ミスターPは言葉を発しませんが、アーサーやリアムと身振りや手振り、アイコンタクトなどで交流していきます。
    なにもいわずぎゅっとされるのは、とても気持ちがいいものです。
    ミスターPが家族の一員のようになり、リアムともいい関係をつくり、
    リアムが落ち着くことで、自然とアーサーとも波風たたくなっていきました。

    家族の間がうまくいっていないとき、
    誰か第三者が介入することで、風通しがよくなることがあります。
    何かつまっていたものがとれると、
    そこから先はもう第三者がいなくても、風は通っていくのでしょう。

    挿絵もいっぱいある本書は、小学校中学年から楽しめます。

    読んでいて、マーク・ベロニカの絵本『ラチとらいおん』を思い出しました。

    1965年初版のこの絵本は、よわむしのラチがどこからかやってきが小さな赤いライオンと出会うことで、少しずつつよくなっていくお話。最高の友だちができるとどんなに力になれるか、勇気をもらえる絵本です。

    アーサーとミスターPの友情もすてきです。ぜひ読んでみてください。

  • 『ジュディ・モードのビッグな夏休み』

    『ジュディ・モードのビッグな夏休み』
    ジュディ・モードとなかまたち★10

    メーガン・マクドナルド&キャシー・ウォー 作
    ピーター・レイノルズ 絵 宮坂宏美訳 小峰書店

    ジュディ・モードとなかまたち4年ぶりの新刊。
    1巻が出たのは2004年なので、13年前(2017年現在)。
    新刊の表紙をみてJKの娘っこが「なつかしい! うちにたくさんあるよね、おもしろかったやつだ」と声をあげていました。

    そう、ジュディの本は軽快でおもしろい!

    暑い夏の日に届いたこの本を、思わず一気読みしました。

    サイコーに楽しい夏休みにするためにいろいろ計画をたてたジュディでしたが、なかまたちの内2人は既に予定が入っていることがわかります。その上、両親も出かけることになり、休みの間、ジュディたちをみてくれるのは、赤ちゃん以来会ったことのない、パールおばさん(お父さんの妹)。

    スリルのあることにチャレンジしてポイントを競いあい、夏休みを楽しもうとするジュディ。一緒にはいられない仲間達もポイント申告しあいます。ジュディはなかなかポイントをためることに成功しません。
    パールおばさんは世界を旅する芸術家なので、会ったら意気投合し、ポイント集めにも協力してくれるのですが、それでもなかなかうまくいかず……。

    それでもジュディはサイコーの夏休みにするべく楽しむ術を探しまくります。

    読んでいて私もこの夏は楽しまねばと思ってしまうほど、ジュディからパワーをもらいました。

    そういえば、JKの娘っこも、夏休みにしたいことで「花火をみたい」「彼氏が欲しい」「浴衣をきたい」などなど、できそうなことも、できなさそうなこもごちゃまぜにいつも願っています。大人より思春期には夏休みは大事かも。

    ただジュディのように、サイコーにするための努力はあまりしていないかな(笑)。すぐネガティブに「私はもうダメ・・・」と思っている様子。ジュディを見習ってほしい、とちらりと思ってしまう、すっかり大人で母の私です。

    さて本に戻ります。

    ずっとジュディの物語を訳しているのは宮坂宏美さん。
    低学年向けでユーモアある本を訳すのには定評があります。
    平易ですっきりした訳文は物語をとことん楽しませてくれます。

    ぜひこの夏に読んでみてください。
    そしておもしろかったら既刊も手にとってみてくださいね。

            

  • 『レイミー・ナイチンゲール』6月に読んだ本

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    6月にあげたのはこの本です。

    主人公の少女レイミーは10歳。
    父親がかけおちをして家を出ていってしまい、
    その父親に帰ってきてもらう方法をレイミーは考えます。
    思いついたのが美少女コンテストで優勝して新聞にのること。
    新聞を読んだ父親はきっと帰ってきてくれると――。

    美少女コンテストで優勝すべく、バトントワリングを習いに行くレイミー。
    そこで2人の少女と出会います。
    3人の少女たちはそれぞれの抱えているもので
    自分のキャパを超えそうになると
    互いに助け合います。

    抱えているもの(問題)を解決するよう計画をたてる。
    合理的な考えです。

    計画どおりに事がすすまないのは、どこの世界にもあること。
    それでも、何かしらアクションを起こすことは、
    開いていないドアが開き、別の世界を見せてくれるのです。

    世界があたたかく広がっていることが伝わってくる物語。
    支えてくれる友だちっていいもんです。

  • 『楽しい川辺』4月5月に読んだ本

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    4月に教えてもらいアップした本がこちら『楽しい川辺』
    訳者杉田七重さんを信頼しているので、最新訳書を選出。
    西村書店の豪華愛蔵版(!)シリーズはクォリティが高く、どの本もおもしろいのです。

    『楽しい川辺』といえば動物ファンタジーでは有名作品。
    石井桃子さんの翻訳(こちらは『たのしい川べ』(岩波書店)で楽しんだ方も多いはず。
    私もそうなのですが、杉田さんの訳も期待をうらぎりません。

    物語冒頭にこまかく豊かに語られる自然描写は目に浮かぶようで、
    何度か読み返しながら読んだほど。

    4月から5月にかけて、近くのお城へ写生会で行ったのですが、
    野の花や木をじっくり1時間半くらい眺めていただけで、
    草木の美しさにノックアウトされてしまいました。

    そのタイミングでこの『楽しい川辺』を読んだのはとてもよかった。
    春の季節から描かれているのですが、
    読んでいると雪国に住んでいることもあり
    雪がとけ、ぺしゃんこになっていた草がたちあがる様子の美しさにほれぼれします。

    まさに、季節そのものが言葉になっているのです。

    ああ、幸福な読書時間。
    すてきに訳してくださり杉田さんに感謝するばかり。
    ありがとうございます。