『シロクマが家にやってきた!』

『シロクマが家にやってきた!』
マリア・ファラー 作
ダニエル・リエリー 絵
杉本 詠実 訳
白水 あかね 装丁
あかね書房

海外文学のおもしろさを伝えてくれる「BOOKMARK」という小冊子をご存知でしょうか。
2018年1月現在、最新号は10号ですが、その前の9号の特集が装丁でした。「顔が好き♡」というタイトルも秀逸で、確かに装丁は本の「顔」ですね。

ご紹介する本書『シロクマが家にやってきた!』も「顔」がすてきです。
人柄(いや、クマ柄でしょうか)のよさそうな顔と、クマを見上げる少年のいい感じが伝わってくる表紙。
そして、周りにはさかながいっぱい。
なにせ、わたくしのハンドル名がさかななものですから、特にさかなが描かれているものは無条件に惹かれます。
とはいえ、ここに描かれているさかなは、かわいがられる対象ではないのですが、それはさておき。

主人公アーサーには障害のあるリアムという弟がいます。
両親は毎日の生活の中でリアムを優先にことをすすめるので、アーサーは不満がつのりリアムを邪険にしてしまいます。
アーサーがテレビでサッカーゲームを見たかった日、リアムがパニックをおこした為テレビはおあずけ。アーサーはつもっていた不満を爆発させ家を飛び出そうとするのですが、家の前になんとシロクマが……。

シロクマの名前はミスターP。

ミスターPは言葉を発しませんが、アーサーやリアムと身振りや手振り、アイコンタクトなどで交流していきます。
なにもいわずぎゅっとされるのは、とても気持ちがいいものです。
ミスターPが家族の一員のようになり、リアムともいい関係をつくり、
リアムが落ち着くことで、自然とアーサーとも波風たたくなっていきました。

家族の間がうまくいっていないとき、
誰か第三者が介入することで、風通しがよくなることがあります。
何かつまっていたものがとれると、
そこから先はもう第三者がいなくても、風は通っていくのでしょう。

挿絵もいっぱいある本書は、小学校中学年から楽しめます。

読んでいて、マーク・ベロニカの絵本『ラチとらいおん』を思い出しました。

1965年初版のこの絵本は、よわむしのラチがどこからかやってきが小さな赤いライオンと出会うことで、少しずつつよくなっていくお話。最高の友だちができるとどんなに力になれるか、勇気をもらえる絵本です。

アーサーとミスターPの友情もすてきです。ぜひ読んでみてください。