『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』ほか

4/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』をご紹介しました。 http://back.shohyoumaga.net/   ———————————————————————-■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな———————————————————————-94 おもしろい本を読みたい  『ぬけ穴の首 西鶴の諸国ばなし』廣末 保 岩波少年文庫  1972年に、平凡社で刊行されたものが、岩波少年文庫で読めるようになりました。  江戸時代の作家、井原西鶴の話を種としてつくられた7編が収録されています。作者廣末さんのあとがきによると、西鶴の作品では四百字詰の原稿用紙4枚から7枚程度のものを、廣末さんの作品では3倍から8、9倍の長さになっているそうです。  江戸時代に書かれた内容なので、もちろん時代ものですが、めっぽう読みやすく、話の種からきれいに花が咲いたもの(物語)を鑑賞させてもらえます。  タイトルにもなっている「ぬけ穴の首」はぞくりとさせる怪談話のよう。  判右衛門の兄はささいなことで殺害され、兄嫁から仇討ちを依頼されました。気はすすまないものの、断ることもできず、息子をつれて相手を斬りに行くのですが……。  殺害される理由が髑髏によって語られるシーンもあり、終始怖さがつきまといます。それでいて、世の理をみているのだと納得させられるところもあるのですが、最後は本当に怖い。 「わるだくみ」は、知恵と才覚で一介のお茶販売から、茶問屋の主へと一財産を築いた利助の話。本来は金儲けよりも、おもしろいことをするのが好きだった利助なのですが、儲けが大きくなるにつれ、お金に魅力を感じ……。  人の欲について書かれた話は、昨今、ニュースにもなる会社の不正とよく似てます。この話のおもしろさは、利助が死んだ話のあと話も短篇のように書かれているところで、最後の最後まで、ひっぱられます。  いつか西鶴の作品そのものも読んでみなくては。  さて、次にご紹介する絵本も、作者は亡くなっており、その作者スキャリーさん生誕100年に邦訳されたものです。  『スキャリーおじさんのとってもたのしいえいごえじてん』 リチャード・スキャリー さく ふみみさを やく 松本加奈子 英語監修 BL出版  絵本作家として活躍したスキャリーさんはアメリカ・ボストン生まれ。出版された絵本の発行部数は2億冊を超えたともいわれています。  作者紹介を引用すると、スキャリーさんのことばに「どんなものにも教育的な面がある。でもぼくが伝えたいのはおかしさだ」と語ったそうです。  そのとおり、スキャリー絵本はどれも楽しいものばかり。  本書は英単語を楽しく覚えられるもので、英単語に意味とともにカタカナでの読み方がついています。  このカタカナの読み方が工夫されていて、アクセントを強くするところは太字で大きく、文字も大小組み入れて、英語の音に近い読み方ができるようになっているのです。  文字も並べているだけではなく、「えをかこう、いろをぬろう」「おもちゃ」「どうぐ」「くうこう」など、様々な場面にたくさんの動物を登場させて、いきいきとした雰囲気の中、英単語がおかれています。  家の本棚にこの絵本があれば、子どもが一人読みで楽しく英語にふれられそうです。  最後にご紹介するのは、 名探偵 テスとミナシリーズで最新刊は3巻。 『名探偵テスとミナ みずうみの黒いかげ』 ポーラ・ハリソン 作 村上利佳 訳 花珠 絵 文響社  ふたごみたいにそっくりな2人テスとミナ。 けれど、立場は正反対(!?) ひとりはメイド、ひとりはプリンセス。年は同じ10歳です。  かわいらしいテスとミナが表紙のソフトカバーなつくりは、小学校中学年くらいの子が楽しめそうです。  ふたりのいるお城で事件がおきると、立場を入れ替えながら、解決していくミステリーでもあり、メリハリある展開で謎解きの吸引力はかなり強く、おもしろいのです。  巻末にはファッションコーデの特別ページもつけられていたり、3巻ではオリジナルアイテムとしてブックマークやポストカード、時間割表もついているという豪華さ。(時間割表、なつかしい!)  知人の小学5年生の女の子に紹介したところ、毎晩夢中になって読んでいるとのこと。次の巻は7月発売予定。  さて、本を読んでおもしろい!と思うのは本読みにとって至福のときですが、このよく使う「おもしろさ」。『ぬけ穴の首』には町田康さんが古典の「おもしろみ」という文章を寄せており、そこでこう書いています。 「多くの人は、おもしろいことはただひたすらにおもしろいだけ、と信じているが、実はおもしろさには二種類のおもしろさがある。」  この二種類のおもしろさの話がまた「おもしろい」のでぜひご一読を。 ▼書評メルマガ登録はこちらからhttp://back.shohyoumaga.net/