Month: October 2018

『ジャーニー 国境をこえて』『ソフィーのやさいばたけ』『わたしたちだけのときは』

10/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ジャーニー 国境をこえて』『ソフィーのやさいばたけ』『わたしたちだけのときは』の3冊をご紹介しました。 http://back.shohyoumaga.net/ ———————————————————————– ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな ———————————————————————- 88 移動する、その先にあるもの  『ジャーニー 国境をこえて』  フランチェスカ・サンナ 作  青山 真知子 訳  きじとら出版  描かれているのは、  どこの国かを特定せずに、  戦争がきっかけで、自分の国から「安心してくらせる」よその国へ旅に出る親子。  夏になると家族そろって海を楽しんでいた暮らしは、戦争でかきけされ、めちゃくちゃにされました。  デフォルメされた中間色の絵の中で、戦争の暗い影だけは濃い黒でぬられ、その色をもってして残酷さが際立ちます。  黒い影の手から離れるために、親子を含め多くの人がいままでの暮らしを後ろに残して、本当は望まない長い長い旅に出なくてはならない状況を絵が訴えます。  絵本では「安心してくらせる」よその国にたどりつくところは描いていません。たどりつこうと動いている進行形がそこにあるだけです。  帯の言葉を書いているのは、自分の国を離れて8歳のときに日本にきた女優のサヘル・ローズさん。  育ての親と2人で来日してからも生活はすぐに軌道にのらず、きびしい生活が長く続いたそうです。  サヘル・ローズさんが帯に書かれた言葉には体験の重みを感じます。     「ただいま」といえる故郷はありますか?    戦争が奪うのは命だけじゃない、笑顔も居場所も奪った。    それでも彼らは、そして私も生きようとしている。  絵本を刊行したきじとら出版では、本書を題材にして人権を学べるように、ワークシートをHPで公開していますのでぜひ下記を参照ください。   http://kijitora.co.jp/  「本のご紹介」>「ジャーニー 国境をこえて」からダウンロード  次にご紹介するのは、自分たちの土地で野菜を育てる絵本です。  『ソフィーのやさいばたけ』  ゲルダ・ミューラー 作 ふしみ みさを 訳  BL出版  オランダ生まれ、現在はパリで生活しているゲルダ・ミューラー。彼女の描く自然に私はとても惹かれます。花や野菜についている土がリアルに感じるからです。  87歳の絵本作家が描いたのは、夏休みに田舎の祖父母宅に遊びに行ったソフィーです。ソフィーは祖父から、畑道具と、自分の好きなものを植えていい畑をもらいます。  虫がいるおかげで、花は実をつけることを、ソフィーは祖母に絵をかいてもらいながら教えてもらいます。    お日様の下にある畑だけでなく、夜空の下でも育っている野菜、夏からはじまり、秋、冬、春と季節がめぐる様子、    作者ゲルダ・ミュラーは、ソフィーの祖父母のように、私たち読者に野菜の育ちみせてくれます。  キャベツ、エンダイブ、ズッキーニ、ケール、パセリ、トマト、  セイヨウミツバチ、クマバチ、オニグモ、ヨトウガ、かたつむり。  生き物がたくさんいる畑の豊かさが絵本に満ちています。  最後に紹介する絵本にもおばあちゃんが登場します。  『わたしたちだけのときは』   デイヴィッド・アレキサンダー・ロバートソン 文   ジュリー・フレット 絵 横山和江 訳 岩波書店  遊びにきた孫娘が祖母にいろいろ質問します。  「ねえ、どうしてそんなにきれいないろの、ふくをきてるの?」  「どうして、かみの毛をながくのばしているの?」  「それはね……」  子どもの頃は自分の好きな服が着られず、みな同じ服を着なければいけなかったこと等、先住民族の同化政策を、孫娘にとどく言葉で語ります。  それは、どれほど同化政策を押しつけても、心は自由と幸せを求めていた祖母の言葉でした。  深みのある色合いで、時代に抵抗することの厳しさを超えて、自由にくらせるいまを生きている祖父母たちが描かれ、余韻が長く残りました。  『ジャーニー 国境をこえて』の親子が、ソフィーや『わたしたちだけのときは』の祖父母や孫娘のように安心してくらせる所にいつか落ち着けますように。