2018年5月

  • 『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』『いっしょにおいでよ』『ぼくはアイスクリーム博士』『サーカスくまさん』『もりのたんじょうびパーティ』//書評のメルマガ

    5/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『13歳からの絵本ガイド』を読んで印象に残った絵本2冊と、『いっしょにおいでよ』、もりのこ絵本4冊シリーズの内の2冊『サーカスくまさん』『もりのたんじょうびパーティ』をご紹介しました。
    http://back.shohyoumaga.net/

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    ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな
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    83 絵本の広くて深い世界

     自分のよく知らないことを調べるにはガイドブックがもっとも近道。
     もちろん、自分の勘だけで見つける楽しみもありですが、ガイドされることで深いところにたどりつけるんです。

     『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』
                金原瑞人/ひこ・田中 監修 西村書店

     本書のガイドさんは編集者、書店員、翻訳者、評論家、作家の14人。
     タイトルに13歳からとあえて掲げているように、小さいこどもが読む絵本とはまた違う切り口で紹介しています。

     知らなかった絵本で読みたくなったナンバー1はこちら。

     『天女銭湯』
     作 ペク・ヒナ 訳 長谷川義史 ブロンズ新社

     粘土細工の人形で天女さんを造形し、銭湯で出会う少女と天女さんとのやりとりが描かれています。

     天女さんと少女の表情が独特でパワフルも感じられ、これは買って読まねばと思ってます。

     そして既に読んでいた絵本で私もすすめたくなった絵本は2冊。

     『レ・ミゼラブル ファンティーヌとコゼット』
     原作 ビクトル・ユゴー 再話 リュック・ルフォール
     絵 ジェラール・デュボワ 訳 河野万里子 小峰書店

     長編の原作を再話したもので、文章もかなり多い絵本です。
     原作の魅力を活かしつつ、絵と共に重厚な仕上がりで、これは本当におすすめ。

     『宮澤賢治 「旭川。」より』
     文・画 あべ弘士 BL出版

     恥ずかしながら、この絵本で知った詩「旭川。」
     「旭川で暮らす絵本作家が、この詩を絵本化したのも必然と言えるでしょう」の紹介文に納得。道産子の私は、旭山動物園であべさんの絵を初めて見て以来この画家のファンなのです。
     詩とともに、あべさんの絵に深いところにつれていってもらえました。

     どの絵本も中高校生が読んだらどんなふうに感じるのか楽しみなものばかり。
     学校の図書室にぜひおいてもらいたいガイドブックです。

     さて、引き続き私からも絵本をご紹介していきます。

     『いっしょにおいでよ』
     ホリー・M・マギー 文 パスカル・ルメートル 絵 
     ながかがちひろ 訳 廣済堂あかつき

     ながかわちひろさんの訳者あとがきによると、
     この絵本は「自由なくらしを手放さないこと、外国のたべものや文化を楽し
     むことも、テロやヘイトスピーチへの意思表示」と思った作者と画家の2人
     がつくりました。

     おんなのこはテレビでニュースをみてこわくなります。
     たくさんの人たちがにらみ合い怒りをみせている。
     この国から出て行けと怒鳴っている。

     お父さんにたずねます「こんなのっていやだ、どうしたらいいの?」と。
     「いっしょにおいで」とお父さんはおんなのこと外出します。

     おんなのこはお母さんにもたずねます。
     お母さんとも外出しました。

     両親と外出して感じたことで、
     今度はおんなのこはひとりで出かけます。
     途中で友だちのおとこのこといっしょになります。

     「いっしょにおいでよ」

     そんな一言で、勇気を出してみる。行動してみる。
     世界をよくしていくには、最初の一歩を踏み出すこと。

     平易な言葉で、自分のくらしを手放さないためにどうするかが伝わってきます。

     絵本のなかにいるおんなのこは、時に、私たち読み手を見つめていて、その目をみていると、自分も襟を正す気持ちになりました。

     メッセージ力を実現させているのは、翻訳者なかがわさんの力でもあります。
     http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=25

     ブログには、この絵本を訳されることについて興味深いことも書かれていますので、ぜひぜひ読んでみてください。

     次にご紹介するのは、これから暑くなる季節に食べたくなるアイスクリーム
     のワクワクする絵本。

     『ぼくはアイスクリーム博士』
     ピーター・シス さく たなか あきこ やく 西村書店

     絵本のうれしいところは、文章とともに豊富な絵のおかげで知りたいことがわかりやすく理解できる点にあると思います。

     本書はアイスクリームの起源、どんなふうにつくるのか、様々な国のアイスクリームの歴史などが、主人公のジョー少年の視点から描かれます。

     ジョー少年はおじいちゃんから、どんな夏休みを過ごしているのか手紙をもらいました。
     
     ジョーの夏休みはこんな感じです。
     アイスクリームの本を読み、ピスタチオなど知らない言葉を覚え、
     アイスクリームを使って計算問題を解いてみたり、
     アイスクリームでアメリカや中国などの歴史も勉強したりします。

     つまり大好きなアイスクリーム三昧の夏なのです。
     カラフルなアイスクリームがどのページにも登場し、私自身、初めて知ることがいろいろありました。

     5月9日はアイスクリームの日だということも教えてもらい、
     肌寒い日ではあったのですが、マンゴープリン~ココナッツミルク仕立て~のアイスを食べました。おいしい!

     今年の夏はこの絵本を読みながら、いろんなアイスを食べようと思っています。

     最後にご紹介する絵本は、小さなお子さんにぴったりの小さな絵本。

     「もりのこえほん」シリーズとして全4冊の内2冊をご紹介します。

     『サーカスくまさん』
     『もりのたんじょうびパーティ』
     エリザベス・イワノフスキー 作 ふしみみさを 訳 岩波書店

     シリーズの原書は1944年にベルギーで刊行され、シリーズ名はフランス語で「心配なく お気軽に」という意味。

     絵本の説明によると、刊行時は戦時のため、紙を手に入れるのが難しく、壁紙の試し刷り用の紙を使い、絵本サイズも小さくしたそうです。

     原画はグワッシュ(不透明な水彩絵絵具)を用い5つの色で絵本の登場人物たちを色鮮やかに描いています。

     『サーカスくまさん』では、タイトルにあるように、くまさんがサーカスですごい技とおちゃめなところをみせてくれます。

     『もりのたんじょうびパーティ』では、森の生き物たちのダンスやパレードなど楽しい出し物がいろいろでてきます。

     小さいお子さんとの読み聞かせだけでなく、デザイン性の高い絵本ですのでじっくり鑑賞する楽しみもあり、贈り物にもいいですね。楽しみは様々。

     ぜひ手にとってみてください。