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『いなばのしろうさぎ』他

125 とびきりきれいなもの   きれいな絵本が届きました。 岩崎書店「日本の神話えほん」シリーズの『いなばのしろうさぎ』です。  ふしみみさをさんが文章を書き、ポール・コックスさんが絵を描いているシリーズ絵本。  ポール・コックスさんは、現在板橋区立美術館で展覧会も開催されています。コロナ禍になって以来、とんと東京が外国なみに遠くなってしまいました。  それはさておき、絵本です。  ポール・コックスさんのファンにとって、新作絵本が出るたびに驚かされる斬新な表現はたまらないものがあると思います。  今回もそうでした。  日本的な「和」の雰囲気をもちつつ、無国籍の空気もまとっている。 近しさと遠さの融合があるんです。  表紙に描かれている、しろうさぎの目をみてください。「ほら、早くページを繰りなさいよ」といっている目。  開いてからは、すっかり古事記ワールドに入りこみます。 どのページも赤の色が印象的におかれ、 ダイナミックな構図で絵と文章が両輪で動いています。  ふしみさんは、古事記を読み込み、神様達の人間臭さを感じ取り、破天荒さと原始的な部分に惹きこまれていったそうです。  ポールさんの古事記リサーチも念入りでした。俵屋宗達、北斎など、ポールさんが敬愛する日本の画家たちの作品を大量に模写し、テクニックを試し、日本の古い服装を丁寧にスケッチし、そういうものを全て自分におとしこんだ上で描いた絵なのです。  おふたりの真摯な仕事の結果としてできあがった絵本は、すばらしい芸術作品となり、小さい子どもも、大人も心から楽しめるものになっています。  そういえば、子どもが小さい時に読んだ『古事記物語』(原書房)があったなと本棚を探して、久しぶりに、鈴木三重吉のものを取り出しました。  その本には、長男が小学3年生の時に読んだ感想文がはさまれていました。 学校に提出したものではなさそうで、読んだあとに、A4のコピー用紙に書いたようです。紹介させてください。  『古事記物語』ぜんぶ  この物語には、“きぼう””わらい””歌”があります。神たちは、もともと人間でした。「女神の死」というのが一ばん大人の話にそくりでした。さい後のが“神”が生まれておもしろうだと思いました。そしていろいろな神がみがいろいろなことをして日本ができたと思いました。 「天の岩屋」それもおもしろいです。この話は天照大神と二番めの弟さまの月読命と言う話です。つまりこのお話しは災いが一どきに起こってきます。さい後は、そのまま下界へおいでになります。という話です。 「八俣の大蛇」というだいじゃの話です。この話は、須佐之男命は大空から追いおろされて、出雲の国の肥の河の河上の鳥髪というところにいくお話しです。さいごのところは、大国主神、またの名を大穴牟遅神とおっしゃるりっぱな神さまがお生まれになったという話です。 このお話しは、大人の話みたいでした。 さいしょのお話しはたいくつだっただけで、だんだんおもしろくなってきました。  鈴木三重吉が大正時代に再話した本書は、子どもが読むには難しい言葉もああるのですが、全ルビだったので読めたのでしょうね。大人の話を読んでいるような気持ちになったのがうれしかったみたいです。  さて、現代の物語もご紹介いたします。  『マイロのスケッチブック』鈴木出版 マット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン 絵  石津ちひろ 役  『おばあちゃんとバスにのって』(鈴木出版)でニューベリー賞、コールデコット賞オナーを受賞しています。その後に鈴木出版から刊行されている『カルメラのねがい』も同コンビ。本書はコンビ第3作目にあたります。  マイロはスケッチブックをもって、お姉ちゃんと一緒に電車に乗ります。 電車に乗っている人たちの生活を想像しながら、マイロは絵を描きます。 描くたびにお姉ちゃんに見てもらおうとするのですが、しっかりは見てもらえません。マイロたちはどこへ向かっているのでしょう。  出かけることは、嬉しいことでもあり緊張することでもあり、その気持ちを落ち着かせるためにもマイロは絵を描いているようです。  マイロは描きながら、自分はどう見られているのかなとも考えます。 人はどうしたって、見かけではわからないことばかり。 どんな生活をしているのか、どんな家族がいるのか。  最後のページまで読むと、マイロたちがどこへ誰に会いにいったかがわかり、ふたりの緊張の理由がみえてきます。  『タフィー』(サラ・クロッサン 作 三辺律子 訳 岩波書店)も緊張感ある物語です。  岩波書店のスタンプ・ブックシリーズ。 サラ・クロッサンは散文詩で物語を紡ぎます。  父親からの暴力を、なんとかしのげば、本当は自分を大事にしてくれる、だって娘なのだからと思うアリソン。  しかし暴力は痛く辛く、体も心も蝕まれます。 アリソンは逃げます。 まだ学生でお金すらもっていないアリソンはどこに安寧の場所があるのでしょう。  最後まで緊張は続きますが、光もあります。 読んでください。  — 今回が2021年最後の記事になります。 いつも辛抱強く待ってくださる原口さんに感謝いたします。  みなさま、1年間読んでくださりありがとうございます。 来年もどうぞよろしくお願いいたします。  (林さかな)https://twitter.com/rumblefish