Month: January 2019

『ジュリアが糸をつむいだ日』『ぼくたちは幽霊じゃない』『キツネのはじめてのふゆ』『ぼくはなにいろのネコ?』

1/10日号で配信された「書評のメルマガ」では『ジュリアが糸をつむいだ日』『ぼくたちは幽霊じゃない』『キツネのはじめてのふゆ』『ぼくはなにいろのネコ?』をご紹介しました。 http://back.shohyoumaga.net/ ———————————————————————– ■「いろんなひとに届けたい こどもの本」/林さかな ———————————————————————- 91 見える世界を広げよう  年が明けました。  2019年がもどうぞよろしくお願いいたします。  平和な一年になりますように。  『ジュリアが糸をつむいだ日』   リンダ・スー・パーク 作   ないとうふみこ 訳 いちかわなつこ 絵 徳間書店  2002年『モギ ちいさな焼きもの師』(片岡しのぶ訳/あすなろ書房)でニューベリー賞を受賞したリンダ・スー・パークが書いた物語です。  主人公のジュリアは7先生。親友のパトリックと一緒に、〈楽しい農業クラブ・プレーンフィールド支部〉略して「楽農クラブ」に入りました。一年に一度、クラブの生徒たちは自由研究のテーマを決め、半年ほどかけて研究し、発表します。優秀な生徒は州の品評会で発表することができるので、それを目標にみな頑張ります。  2人はジュリアのお母さんの提案もありカイコの飼育をテーマにするのですが、ジュリアはあまり気乗りがしませんでした。しかし一緒に研究するパトリックと共に、カイコの飼育がはじまると、だんだん愛着が増してきます。生き物を育てる楽しみに目覚めるジュリアです。  カイコを飼育された方なら、カイコの魅力をご存知でしょう。私もその一人。卵から成長していくカイコの姿にずっと寄り添っていると、かわいらしくてたまらなくなります。  餌となる桑の葉を集めるのは飼育の柱です。しかし、ジュリアたちが探すも簡単には見つかりません。ようやく、桑の木のある家のディクソンさんと関わりをもてるようになるのですが、ディクソンさんとの出会いは、カイコの事だけではなく、ジュリアたちの世界をも広げるきっかけになります。  ジュリアがカイコの飼育を通して視野が広がっていく成長物語は、 カイコ好きにとって(私です・笑)たまらない物語です。  『ぼくたちは幽霊じゃない』  ファブリツィオ・がッティ 作 関口英子 訳 岩波書店  ティーンの喜びや悩みをつづった作品シリーズであるSTAMP BOOKSの一冊。  物語は実際の体験談がもとになったもので、アルバニア人のヴィキがイタリアに渡り、どのような暮らしをしていたかが描かれています。  苦労してイタリアに渡ったものの、難民のヴィキたち家族は、滞在許可証がおりるまでは不法滞在なため、町なかを歩くときは警察の職務質問を受けずにすむよう注意が必要です。ヴィキは母親にイタリアに行けばいい暮らしができるって言ってたじゃないかと問うのですが、状況がすぐに変わることはありませんでした。  訳者あとがきによると、イタリアには「学校はすべての人に開かれる」と憲法に明記されているそうです。だからこそ、ヴィキたちも、公立小学校に通っている間は、イタリアに住んでいても、いないものと扱われる幽霊扱いではなく、一人の人間として勉強を教わり学び続けることができます。  丹念に描かれる泥地でのバラック生活や日々の不安定さは物語の最後まで続き安易なカタルシスで終わっていません。  それでも、未来への希望をもって毎日を生きるヴィキと出会うことで、知らなくてはならないことをまた一つ教わります。  次に紹介するのは絵本です。  『キツネのはじめてのふゆ』   マリオン・デーン・バウアー 作 リチャード・ジョーンズ 絵   横山和江 訳 すずき出版  親から離れてはじめての冬を迎えたキツネ。冬がきたら何をしたらいいのか、さまざまな動物たちに教えてもらいます。  けむし、カメ、コウモリ、リス、ガン、カンジキウサギ、クロクマ。  たとえばカメはこう教えてくれました。  「しっぽを そらにむけて、あたまから とびこむんだ。  みずの そこへ むかってね。  それから、ひんやりした どろに からだを つるりと うずめるのさ」  キツネと動物たちのやりとりは、  言葉は詩的で、暖色系の絵は言葉をつつみこむようにやわらかです。  しかし、いろいろ教えてもらっても、キツネにはピンときません。  そんなキツネが最後に出会ったのは――。    絵本にはめずらしく訳者あとがきがついていますが、それがキツネの行動をよく理解させてくれます。  冬の季節に親子で楽しめる絵本です。  もう一冊絵本をご紹介します。  『ぼくはなにいろのネコ?』  ロジャー・デュボアザン さく 山本まつよ やく 子ども文庫の会  1974年にニューヨーク科学アカデミーの児童書部門賞を受賞した作品。  版元紹介によると「(印刷に)使える色数が少なければ少ないほど、力を試される」と語るデュボアザンが、さまざまに混ざり合っている美しい色の世界を子どもにわかりやすく伝えるものになっています。  黄色、青、緑などそれぞれの色が自分たちの色がいかにすばらしいか彩りをみせて読者に語りかけます。そこに子ネコのマックスが、色に対して意見をはさみ、色への理解を深める助けをしてくれます。  一つの色での美しさ、重なり合うことによる美しさ。色のもたらす不思議さがわかりやすく描かれ、科学の絵本としてもおすすめです。